ながめせし間に

土佐

朝なけに世のうきことをしのびつつながめせし間に年はへにけり

 

 

「世のうきことをしのぶ」のは、普通の人々の有り様で、うちの爺には当てはまらない。

人生を左右したような大事件でも、すぐに忘れてしまう人なのだ。

であるからして、同じ間違いを繰り返す。

 

「普通」である私が、過去の事例を挙げて注意喚起すれば、「なんでそう後ろ向きなのか?」と逆にキレられる始末。

私の「うきこと」の大半は、この爺由来と言っても過言ではない。

よく騙される人なのだ。

 

先日、爺が買い物に出かけてくるというので、ハエタタキを買ってきてくれと頼んだら、買って帰ってきたものは、テニスのラケット。

『元々おかしな人だったが、ついにボケたか。』と思いきや、一応それはハエタタキらしかった。

ラケットの持ち手部分に乾電池を入れて、ラケットのネット部分に虫を当て感電死させるという代物。

立ち寄った店の店員さんに、ハエタタキはどこにあるのか尋ねたら、「今時のハエタタキは、こういう形になっていて他には無い。」と説明されて、定価500円のところ、150円にまけてもらって買ってきたらしい。。。

 

『たとえ150円でも、そんなもん買うなや。ゴミ代かかるやん。』

と喉元まで来た言葉は、

『これで逆ギレされたら、もっと疲れるな。』

と思い、飲み込んだ。

 

そこへ、グッドタイミングで、蜂が飛んできた。

その感電死させるラケットタイプのハエタタキを当てると、ヂリッという嫌な音をたてた。

蜂は床の上にポトリと落ちた。

 

が、すぐ復活して飛んでった。

 

意味な〜いじゃ〜ん!