和歌

敵味方の向こう側

赤染衛門 元輔が昔住みける家のかた原に、清少納言住し頃、雪のつみしく降りて、隔ての垣もなく倒れて見わたされしに 跡もなく雪ふるさとの荒れたるをいづれ昔の垣根とか見る 上記は、清少納言を訪ねて行った際の赤染衛門の歌。 当時の政争で、負け組の中関…

また寂しくなるな

誰でも投稿出来る短歌サイト「うたの日」、そこの常連さんのお一人、忠さんがしばらく参加されないようだ。 後から知って、少なからずショックである。 個人的には、呉竹さんに続いて、ちょっと寂しいな。 ごくごくたまにだけど、評というより「いんねんつけ…

終わらない夏

凡河内躬恒 みなづきのつごもりの日よめる 夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへ涼しき風や吹くらむ 今日の日にふさわしい歌、なぜなら... 本日令和5(2023)年8月15日は、旧暦の6月末日。 でも、ここには、涼しい風なんぞ来やしません。 今日も最高気温35…

大伴旅人 古の七の賢しき人たちも欲りせしものは酒にあるらし 旅人を理解しようと思えば、この歌が最適か。 古の七賢は「竹林の七賢」、魏・晋の隠士たちの事。 魏・晋の時代は陰謀渦巻く動乱の時代で、そんな世の中をわざわざ酒に溺れて阿呆な真似をするこ…

かけゆく月

清少納言 月見れば老いぬる身こそかなしけれつひには山の端に隠れつつ 「月見れば」... 定子を思って、なのだろうな。 清少納言は一条帝の中宮定子に仕えた女房で、定子にその才能を見出された人。 一時は、主人である定子のこれ以上無い栄華をその横で見、…

八十に乱れて

誰でも気軽に無料で投稿出来る短歌サイト「うたの日」... 本日8月8日のお題は、一日中「八」! で、あほな歌を思いついて、即投稿して、あれこれ暑い中動き回って、疲れてちょいと休憩して、ニュース見てたら... ムムムっ!? マジか? と、思えるニュース…

よられつる人

西行 よられつる野もせの草のかげろひて涼しく曇る夕立の空 暑さでよじれてしまった野原一面の草がかげって 涼しく曇る夕立のきそうな空 この頃の夏は、夕立、少な過ぎやしないか? 今年まだ一度も来てないぞ、夕立。 そして、夜になっても気温が下がらない…

殷富門院大輔 見せばやな小島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色は変わらず (私の袖の色をあなたに)お見せしたいものです。 小島の漁師の袖でさえも、 波でぐっしょり濡れた袖の色は変わってはいません。 (私の袖は血の涙で色が変わってしまっているのに)…

おおらかな歌

忌部首 (万葉集3832) 枳(からたち)の棘原(うばら)刈り除(そ)け倉立てむ くそ遠くまれ櫛造る刀自 枳のいばらを刈りとって倉を立てよう。 クソは遠くにしてくれ、櫛を造るばあさんよ。 中西進 講談社文庫「万葉集(四)」より 万葉集には、野糞するば…

怨み節

紀友則 みるもなくめもなき海の磯に出でてかへるがへるも怨みつる哉 う〜む、怨み節っ! 古典の和歌の世界は、恋の歌が多い。 個人的には、あまり恋愛の歌は好きではないけど... 思えば、公家社会とは、狭い閉鎖的なムラ社会。 そこでのコミュニケーションツ…

いかに待つべき

藤原定家 久方の中なる川の鵜飼舟いかに契りて闇を待つらむ あれはいつだったか、この夏スペインのマドリードで、気温40度とか報道されていた。 うちの近辺に棲んでいるイソヒヨドリは、例年なら、電柱やら高い屋根のテッペンで、「ここはワシのシマやどー!…

などか昔と言ひて過ぐらん

よみびとしらず あはれてふ事になぐさむよのなかをなどか昔と言ひて過ぐらん 「昔は・・・だったのに」とは、言いがちである。 どうも最近の漫画アニメには、キラキラヒラヒラチュルリラに欠ける、と思う。 無駄に暴力シーンが多いのも気になる。 特に、この…

待つ間のほど

平貞文 ありはてぬ命待つ間のほどばかりうきことしげく思はずもがな 家の中を掃除していて、前々から手を付けられなかった事を思い出した。 不要になった本を古本屋に引き取ってもらうってこと。 掃除の手を止めて、押入れに放置されてた本を見てみた。 する…

サラダ記念日

凡河内躬恒 ます鏡そこなる影に向かひゐて見る時にこそ知らぬ翁にあふ心地すれ 買い物をしていて、ふとショーウインドウに映った自分の姿を見て、『どこのオバハンやねん?』と最初に思ったのは何時だったろうか。 もうかなり前のような気がするけど。。。 …

恋しかりけり

紀貫之 世の中はかくこそありけれ吹く風の目に見ぬ人も恋しかりけり 忌野清志郎が亡くなって、どれくらい経つのだろうか。 目に見ぬ人、だからこそ一層、恋しかりけれ、である。 RCサクセションのアルバムの中では、「BLUE」がダントツで好きである。 ON TIM…

ながめせし間に

土佐 朝なけに世のうきことをしのびつつながめせし間に年はへにけり 「世のうきことをしのぶ」のは、普通の人々の有り様で、うちの爺には当てはまらない。 人生を左右したような大事件でも、すぐに忘れてしまう人なのだ。 であるからして、同じ間違いを繰り…

年はふれども

在原業平 おほかたは月をもめでじこれぞこの積もれば人の老いとなるもの 思えば、誕生日がのん気に嬉しかったのは、中学生くらいまでだったな。 厄年過ぎたら、ありがたくもなんともなくなるし。 (「鯉のぼり」のメロディーで) ♫ 忘れ〜て〜なんぼ〜の〜誕…

七夕

建礼門院右京大夫 彦星の行合の空をながめても待つこともなきわれぞかなしき 今日は七夕。 最愛の人を戦で亡くした右京大夫は、七夕にちなんだ歌を沢山残しているが、上の和歌はその一つ。 この歌集、私は歌そのものより、長い詞書が好きだ。 特定の文章を美…

さくらの頃

西行 願わくは花のもとにて春死なむその如月の望月のころ 如月の望月の頃とは、お釈迦さんの涅槃に入った時を指す。 旧暦の如月、西行さんの時代は、もう桜が咲いていたのだろうか? お釈迦さんのように逝きたい... 動乱の時代には、切実であったのかもしれ…

わすれぐさ

素性法師 忘れ草何をか種と思ひしはつれなき人の心なりけり 現代では、忘れ草より勿忘草の方を読み物などでは目にすることのほうが多いだろうか。 「うたの日」でも、勿忘草は何度かお題で出て来たけれど、お題として忘れ草を見たことがない。 忘れ草は萱草…

浄不浄

遍昭 はちす葉のにごりにしまぬ心もてなにかは露を玉とあざむく 遍昭さんは、面白い洒落っ気のある御方だったのだと、この歌から想像する。 おそらく、彼の時代には既に「常楽我浄」が仏教であると信じる人が多かったのだろう。 初期仏教からは正反対になっ…

時鳥

大江千里 やどりせし花橘もかれなくになどほととぎす声絶えぬらむ 例年、柑橘類の木の花の匂いが漂いだすのに合わせるかのように、時鳥の声がするようになる。そして、その花が皆枯れてしまう頃には、その声はしなくなる。 まるで、時鳥と花橘とが一対のよう…