自分の身の上に起きた不幸を世間一般にあるありふれた不幸だと思えたら、また少し違うものなのだろうか。
この新年度から始まった朝ドラ「虎に翼」は面白い。
脚本の良さと、主役の伊藤沙莉のコミカルな雰囲気で、非常に重いテーマを上手く見せいているなと思う。
でも、このドラマの時代が時代ゆえに、やはり思わず泣けてくることも。
今週の「よねさん」の話は殊更。
人身売買というのものが、まだ普通にあった時代のことを今の若者は年寄りからどれほど聞いて育っているのだろう。
その若者の親世代の人間でさえ、あまり聞いていないかもしれない。
いや、戦後生まれである団塊世代あたりから、もうあまり意識されてこなかったのかも。
先週だったか、先々週だったか、児童文学作品「ハイジ」についてのドキュメンタリー番組が放送されていた。
私は、ジャストその世代で、幼い頃にテレビのアニメ作品で見て、その劇場版も映画館で見た。(たしか、フィンガー5の映画と一緒に公開されていたと思う。古いハナシ。。。)
大いなる自然の中で動物たちに囲まれて、のびのび育つハイジ... 当時の私には「憧れの生活!」に映っていたのだが...
しかし、そのハイジが都会の病弱なお嬢様クララの話し相手として雇われることになり、お爺さんのアルムの山を離れるが、あれはあの時代にあった人身売買の一つの例だったと、そのドキュメンタリーの中で説明されていた。
言われてみれば、その頃年寄から色々な昔話を、それものどかな民話ではなく、酷な事実を聞いた覚えがある。
対象になるのは女の子ばかりではなかった。
ハイジの映画に連れて行ってくれたのは祖父だったが、たぶん、子供が気付き難いこの児童文学作品の中に込められた意味を、遠回しに伝えたかったのだろうか。
国が戦争を始めると、少年兵というものがやがて出てくる。
世間をよく知らず、教育も十分に受けていない子供に「愛国心」を植え付けて、戦いのロボットやら、時には実験台であるマルタにするというのは、古今東西ある事だ。
どれも実在する個人に起きる個々にとって特別な悲惨な出来事。
「なぜ自分だけがこんなめに?」
でも、それは広く人間の醜い世界に有り得る事で、もしかしたら、何らかの形で少しは改善することも出来るかも知れない...
少なくとも、嘆いているだけよりはマシだろう。
「虎に翼」の時代に女性であっても法律家を目指した人達には、そんな意識があったんじゃないか。
単にエリートを目指したいのではなく。
でも現実には、法律学というのは金がかかる。
お金持ちには大した額じゃないのだろうけど、よねさんみたいな苦学生には生きていくのも大変だ。
お金持ちばかりが法律を作ったり扱うようになると、そうでない大多数に何かと不利に働く世の中になるのは自然の成り行き。
で、歴史は証明する。
日本はこの後、勝てもしない戦争にのめり込んでいくのだ。
本来は、よねさんのような苦しい身の上を知る法律家や立法する人間が、沢山出てこなきゃならんと思うのだが。
さて、今はどうなんだろう?